歴史はべき乗則で動く

ノンフィクション

歴史はべき乗則で動く

ノンフィクション2009/09/08 0:00:00
歴史は「べき乗則」で動く――種の絶滅から戦争までを読み解く複雑系科学 (ハヤカワ文庫NF―数理を愉しむシリーズ)歴史は「べき乗則」で動く――種の絶滅から戦争までを読み解く複雑系科学 (ハヤカワ文庫NF―数理を愉しむシリーズ)
(2009/08/30)
マーク・ブキャナンMark Buchanan

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自然界の多くのものは「正規分布」と呼ばれる状態で分布しています。
これは簡単に言えば「平均値が一番多い」状態です。
知能指数や成人男子の体重など、多くの数値は、平均値を知っていれば(そして、それが正規分布であれば)
高い確率で目の前にいる人の体重を当てることが可能です。

表現を変えれば「典型的な体重(あるいは知能指数)」と呼ぶことができる数値が存在するということです。
これがどういうことなのか理解するために、野球の試合の点差が正規分布だと想定してみてください。
1点差から3点差で試合が終わる確率が90%以上だとします。
そうすると、今日やる野球の試合も、90%以上の確率で1点から3点の差がつくだろう、と予測できます。
「典型的な野球の試合」は1点から3点差で終わるからです。
「90%以上の確率で」という但し書きつきではありますが、正規分布であるということは、ある程度の確率で未来を予想することができると言うことを意味します。

ところが、世の中には正規分布ではない事象も多数存在しています。

本書は、正規分布とは異なる法則で表現できる事象を取り上げています。
(なんか、やたら難しそうな印象を与えてしまっているかもしれませんが、実際小難しいことが書いてあります)
その法則が「べき乗則」。

「べき乗」とは「累乗」とおなじ意味で「ある数同士を掛け合わせる」ことです。
わかりにくいですね。

どんなものが、べき乗則で表すことができるのか?

例えば地震。

地震には周期があり、次にいつ地震が来るかある程度予測ができる。
そう思っていませんか?
でも、次にいつ地震があって、その大きさはどれくらいか、という予知をすることが
(少なくとも今のところ)できないようです。

あるいは、山火事。
どの山火事が大災害になり、どの山火事がそうでないか、予測は非常に難しい。

あるいは、経済。
経済学者の予知というものは基本的に当たらない。

要するに、「べき乗則」に従う事象(地震や山火事や経済など)には、
「典型的な地震」、「典型的な山火事」など存在しない。
予測不可能である。
ということらしい。
えらいこっちゃ。

ところで、よくいわれる「80対20の法則」もそうだとか書いてありますが、「80対20の法則」は統計に基づくものではなく単なる経験則なので、ちょっと違うように思います。

研究者たちはここ数年で、この現象の数学的特徴を、伝染病の流行、交通渋滞の発生、職場での管理職から部下への指示の伝わり方などといった、いろいろな場所に見出してきた。そしてもっとも重要な事実として、原子、分子、生物種、人間、さらには思考といった、あらゆる物事のネットワークは、どれも同様の方法で自らを組織化していくという目立った傾向を持っていることが発見された。

邦題は「べき乗則」が主題のような雰囲気を醸し出してますが
じっさいのとろは「相転移」に関する啓蒙書であるようです。
「相転移」は、最近では「ティッピング・ポイント」などと呼んでもてはやされているのですが、
本書を読んでしまうと、ティッピング・ポイントを語るのは結果論でしかないなと気づかされます。
※スチュアート・カウフマンを先に読んでおいたほうが良いです。