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アインシュタインはフラッシュカードを使わなかった(2)

モーツァルトを聞いて育つと頭が良い子になる、という説があるそうです。
んなアホな、と思うと同時に、
「もしかすると、モーツァルトなら……」と思わせる力があります。
モーツァルト……恐るべし。

そんな話はともかく、
子供の頭を少しでもよくしたいと親が思うのは、別に悪いことでも特別なことでもありません。
でも、その思いにつけ込む人たちがいるのも事実です。
結果として、早期教育を受けた子供たちのなかに、学習することが嫌いになったり
自尊心を持つことができなかったりという問題が起きている。

本書が書かれた背景には、そのような問題意識があります。

子供には遊びが必要だ。
子供は遊びの中から自ら学習していく。
そのプロセスが大事なのだ。

本書の主張をまとめると、これですんでしまいます。
しかし、もしあなたが親なら、
「そんなこといっても、子供にどう接すればいいのかわからない」
という気持ちもあると思います。
遊びが必要なのはわかっていても、ほかの子たちが幼い頃から塾に通っている姿を見ると
焦ってしまうのも無理はありません。

本書では、家庭で親にできることを列挙しています。

【数】
ビデオではなくブロックを使おう:ブロックを実際に手で触って並べたり、分類したりして遊ぶ中で、数の概念を自然と学んでいく。
数はどこにでもある:特別な遊具を用意しなくても、日常生活のいたるところで数を発見することができる。
遊び=学び:子供と一緒に遊ぶこと。大事なことは大人が指図して遊ばせるのではなく、子供のリードに従って遊ぶこと。

【言葉】
子供が興味を持っていることを話題にする:動物園に行って、子供がライオンよりも木の枝にとまっているてんとう虫ばかり見ているとしたら、ライオンのことは忘れて、てんとう虫の話をしよう。
子供が話したことを膨らませよう:違う言い方があることを教えたり、関連することを質問してみたり。
会話を終わらせるのではなく、誘導しよう:子供がいったことを批評するのではなく、一緒にダンスを踊るつもりで。
赤ちゃん言葉を使ってもよい:20歳を過ぎても赤ちゃん言葉が抜けない人なんて(たぶん)いないのだから気にしなくてよい。それよりも子供にわかりやすい言葉を選ぼう。
TVを見る時間は短めに:見るときは一緒に見ながらTVでおこったことを話題にしよう。
外国語に触れさせたいなら実際の環境の中で:外国語に触れさせるなら、TVや本や玩具ではなく、実際の生活の中で。日本語と外国語がミックスした環境は効果的ではない。

【リテラシー:読む】
読書を生活の一部に:子供の生活だけではなく、あなたの生活の一部にも。
スタンプを使う:文字を覚えるのに効果的。
会話をしよう:語彙力は読書だけではなく会話から増えていく。あなたが物語の最初の一節を話して、続きを子供に話してもらうのも良い。
対話をしながら本を読もう:子供に本を読んであげながら、主人公の気持ちを聞いてみたり、「もし××だったら」と聞いてみたりしよう。
読書を楽しもう!:子供を本嫌いにさせないにはこれが一番大事。

【知性】
ちょっとだけ背伸びをさせよう:子供がいま楽にできることよりちょっとだけ大変なことをさせよう。
子供が興味を持っていることをさせる
ゴールに到達するのを手伝ってあげる
うまくいかないときは励ます:無理矢理させるのではなく、励ましてみる。
どうやればできるのか手本を見せてあげる
うまくいかない方法と、うまくいく方法の違いを見せてあげる
子供ができること知っていることと、いまやっていることを結びづけてあげる
何かをするのに「たったひとつの正しい方法がある」と言わない
自分も間違えることがあると子供に伝える:そして、間違いを子供に指摘してもらおう。
想像力や発想力、自分で考える力を育もう
※失敗したことを責められて育った子供は、失敗しそうなことにはチャレンジをせずにすぐに諦める傾向がある

【自尊心】
本人の前で、子供のことを話すときは注意すること:子供は意外とよく理解しているものだ。
子供を1人の人間として扱う
できないことはない、と教える
子供の感情について話しあう

【社会性】
ほかの人の気持ちを話し合う機会を見つける:本の登場人物の気持ちを一緒に考える
感情には原因があることを説明する
子供には、ほかの子供と遊んだり、一人きりになれる時間が必要:その時間は、たんに「何もしてない」ように見えるかもしれませんが、ひとりきりで、あるいは友達と、スケジュールに縛られない時間を過ごすことは重要です。
子供の気持ちを軽んじたり、無視したりしない
子供の視点で世界を見るようにする

そして、結論として、親にとって必要な姿勢として次の4つをあげています。

1. 手の届く範囲での学びがもっとも効果的
2. 結果ではなくプロセスを評価することが、子供を「学習大好き」にする
3. IQではなくEQ(心の知能指数)が大事
4. 文脈を通して学ぶことが真の学び。そして「遊び」ことが真の先生

参考になるでしょうか。

ところで、モーツァルトの話ですが、
「モーツァルトを聞いて育つと頭が良い子になる」という根拠があるわけではなく、
モーツァルトを聞かせてテストをすると、そうでないときと比べて成績が良かった
という実験がきっかけらしいのです。

ところが、
ほかの人が同じ実験をやっても、そんな結果は得られませんでした。
せいぜい、音楽を聴くとリラックスする効果がある、ということがわかる程度。
しかも、モーツァルトでなくてもよい、とのことです。