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人類が消えた世界

アル・ゴアの「不都合な真実」以来、書店では環境保護・エコロジー関連の書籍が平積みされるのを目にするようになりました。

ひとくちに「エコロジー」や「環境問題」と言っても、非常に幅が広く、また様々な問題や矛盾をはらんでいます。

・温暖化対策と経済発展を両立させるためには原子力発電が有効なのではないか?
・環境問題は個人レベルで解決できる問題ではなく、政策・外交レベルで解決すべきことではないか?
・市民の恐怖をかき立てる手法は、科学的な議論を市民の耳から遠ざけ、有効な対策を選択できなくなるのでは?
・環境保護活動はそれぞれの活動項目の間で優先順位をつけられるのか?
・そもそも生物種の絶滅は悪なのか? 絶滅の原因が人類にあるからと言って危機から救おうとするのは、生物の進化に関与するという意味では同じではないか?

こういったことを冷静に解決していくためには感情ではなく、科学的な視点が必要だと思うのですが、わたしが目にしてきた、環境・エコロジー関連の書籍の多くは、感情論を排除して科学的に中立な立場から検証しようというものはありませんでした。
(もちろん、わたしが知らないだけで、科学的な本もたくさんあると思います)

本書をそういう観点から見ると、科学的であろうとする姿勢に好感を持つことができます。

地球環境に対して人類が今までどのように関わってきたかという歴史的知見。
そして、「人類が消えた世界」というタイトルからわかるとおり、人類がいま突然いなくなったら地球環境が人類の影響からどのように回復していくのか、というシミュレーション。

このふたつが本書の内容です。
未来のシミュレーションをするには、過去を知る必要があるということでしょう。いままでに人類が環境にどのようなインパクトを与えてきたのか、さまざまな例が紹介されています。

ハワイとカリフォルニアのあいだに広がるテキサス州ほどの面積のその海域は、亜熱帯無風帯とも呼ばれ、ヨット乗りが近づくことはめったにない。 (中略) この海域の正式名は北太平洋亜熱帯還流だが、海洋学者は別の名で呼ぶことをムーアはすぐに知った。「太平洋巨大ゴミ海域」という名だ。ムーア大佐は、環太平洋地域の半分から海と吹き飛ばされたものがほとんどたどり着く集水孔へ入り込んだ。らせんを描きながら、拡大を続ける醜悪な工業排出物の吹きだまりへと近づいていった。一週間にわたって、ムーアと乗組員は、浮遊するゴミに覆われた小さな大陸ほどもある海域を横断した。